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ラファエロの絵画「アテネの学園」や「聖体の論議」に隠された真実とは?

 ラファエロの絵画でも、とくに有名な「アテネの学堂」(A図)のドーム画には、ギリシャの哲学思想の再生をテーマとしたもので、古代ギリシャの哲学者や科学者たちが五十人以上も描かれています。


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      ※「アテネの学堂」  


 よく見ると、中央に立っている哲学者「プラトン」の顔は、「ダ・ビンチ」の顔に似せて描いています。また哲学者「アリストテレス」の顔は、「ミケランジェロ」に似せて描いております。これは、おそらくラファエロが、「プラトンは、ダ・ビンチほどに天才であり、またアリストテレスも、ミケランジェロほどに天才である。」と思っていたので、似せて描いたのでありましょう。


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     プラトンとアリストテレス

 このことはラファエロが、ダ・ビンチやミケランジェロを芸術の天才として最高の敬意を払っていた証拠でもありましょう。


 この「アテネの学堂」は、プラトンが天に向かって指さして「イデア」を示しているのに対して、アリストテレスは手を水平にして地上をかざしている構図で描かれています。これはプラトンが、「イデアの世界」から哲学を構築していったのに対して、アリストテレスは、経験できる現実世界から哲学を構築していったという対比を表しているのでありましょう。これは両哲学者の真理に到達しようとするアプローチの違いであり、ともに中央のロゴス(論理)の階段を上って吹き抜けの「イデア」の空に至ろうとしているのです。


 右端から二番目にラファエロ本人も、黒いベレー帽をかぶって、こちらを向いている様子が見えるように遊び心があります。

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  さらに、もうひとつの大作「聖体の論議」というドーム画には、天上の世界と地上の世界の一体の構図が描かれています。

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       ※「聖体の論議」 


 じつは、この『聖体の論議』の中にこそ、画家としてのラファエロの、ローマ・カトリック教会に対する強烈なアンチ・テーゼが隠されているのです。


 「聖体の論議」は、天上の世界と地上の世界という構図で描かれている不思議な絵画です。解説していきますと、まず天上世界の中央の玉座に座っているのは、イエス・キリストで、その両脇に母マリアと長い十字架を持っている父ヨセフ(洗礼者ヨハネという説もあるが)がおり、その下には聖霊を象徴する鳩を中心にして、旧約の預言者たちと新約の預言者たちが交互に座っています。よく見ると新約の使徒たちには、オーラがありますが、旧約の預言者たちにはオーラがありません。
 「これはどういうことでありましょうか?」さらにイエス・キリストの玉座の背後の上には、白髭を生やした「父なる神」の姿があり、その左右には三人づつの天使たちが宙を舞っています。


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       ※「聖体の論議」

 そして地上世界においては、真ん中の祭壇を挟んで「三位一体論」を主張する「アタナシウス派」と、あくまで「人間イエス論」を主張する「アリウス派」が論議を交わしています。祭壇左手の法王の宝冠を被った人物は、おそらく「ローマ・カトリック教会」の法王権を確立したと言われるグレゴリウス一世で、また祭壇右手で着席しているのが法王ユリウス二世でありましょう。そしてその手前に立って足元に書物をおいているのが、ユリウス二世の伯父である法王シクストゥス四世かと思われます。このシクトゥス四世には『聖体論』という著書があり、また悪名高き「スペインの異端審問所」を創設しています。このように何人かの法王や枢機卿や、また神学者たちが論議している姿が描かれています。


 さて、ここで一番問題視されるのが、イエス・キリストの背後に姿を見せている「父なる神」の構図です。ここに描かれているのは「ローマ・カトリック教会」が信奉する「旧約の神ヤハウェ」ですが、しかし、この「父なる神」の姿が、図の構成からも、また配色からいっても、それほど神々しい権威のある「父なる神」には見えないことです。

  
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      旧約の父なる神ヤハウェ

 
 「あなたは、どう思われますか?『父なる神』が神々しく見えるでしょうか?気になりませんでしょうか?これは、あくまでも、わたくし館長としての感想なのですが、もしラファエロが、本当に、この『旧約の神ヤハウェ』を、『全知、全能の父なる神』として認識していたのであるならば、このようにイエス・キリストの玉座の後ろから、上半身だけで、くすんだ緑色の衣服をまとって、しかも四角いオーラで、右手の人差し指を立てて、左手に水晶の玉らしき物を持っている姿に描くとは到底思えないのです。」


 「それにもし、この『旧約の神ヤハウェ』が、本当の『父なる神』であったとするならば、そこを光源として、全体に光が放たれていなければならないはずです。そのことはイエス・キリストから大きなオーラが放たれていることと対比してみても一層鮮明にわかるはずです。しかるに、このラファエロの『聖体の論議』では、『旧約の神ヤハウェ』の頭上から、まぎれもなく隠された大きな『黄金の光』が降りてきているのです。」


 「この上空から降り注いでいる神々しい『黄金の光』こそ、まさに『新プラトン主義者』でもあったラファエロが、真に示したかったのは、『一者』(至高神)から流出してくる光だったのではないでしょうか?すなわちラファエロは、『父なる神』として、『旧約の神ヤハウェ』よりも、上位にある『真なる至高神』を見つめいていたのではないか?と推察されるのです。これは、わたしの思い過ごしでしょうか?あなたは、そうは思いませんか?」


 なぜラファエロは、数多くあるキリスト教のテーマの中で、この「聖体の論議」を描いたのでありましょうか?それは、おそらく「ニケーア公会議」における「三位一体の論議」が、その後の「ローマ・カトリック教会」の教義と行動が決定された重要な会議だったからでありましょう。


 その後、この「三位一体の論議」によって勝利した「アタナシウス派」が、「ローマ・カトリック教会」側に正式に認められて、これに反対した「アリウス派」や「グノーシス派」などが異端派とされてしまったのです。そして三九二年のローマ皇帝テオドシウス一世による「キリスト教の国教化」と「異教禁止令」によって、異端者たちが弾圧されて、火あぶりの刑に処せられたのです。


 ラファエロは、「新プラトン主義者」として、この「ローマ・カトリック教会」の教義の決定と異端派を抹殺する仕打ちに「なぜ愛を説いているキリスト教が、異端者を、このように弾圧するのであろうか?」という大きな疑問をもちます。


 そして、このような「『ローマ・カトリック教会』が認める教義以外は、すべて異端であるので、弾圧してもかまわないという考え方は、イエスが説いた愛の教えから見ても、不寛容で、間違ったやり方である。」と、ラファエロは思ったのでしょう。


 さらに、いろいろと探って行くうちに、ラファエロは「その根本原因が、『ローマ・カトリック教会』が信仰している『父なる神』が、『旧約の裁きの神ヤハウェ』であり、『グノーシス派』が信仰しているような『新約の寛容の神エローヒム』ではなかったために、そのような異端者への弾圧が起きたのだ」ということを突き止めたようです。


 「そのことに対する暗黙の抗議で、ラファエロは、『聖体の論議』のフレスコ画の中に、『旧約の神ヤハウェ』の、その上位にある降り注ぐ『黄金の光』としての、『新約の神エローヒム』を『至高神』として暗に示したのではないでしょうか?と、大胆に推理するのです。もしそうであるとしたならば、この『聖体の論議』のフレスコ画の中にこそ、若き天才画家ラファエロが、キリスト教の本質を、どのように洞察していたのかが伺え知れるわけなのです。」


 「このようにラファエロの『聖体の論議』を、はじめとするフレスコ画に秘められたメッセージを読み取ると、ルネッサンスの天才画家としてのラファエロの精神性が、いかに高いものであったかが伺い知れるのです。ともすれば優雅な『聖母子像』だけが有名な、優男に見えるラファエロですが、ローマ・カトリック教会の中枢である『バチカン宮殿の署名の間』に、大胆にも『アテネの学堂』や『聖体の論議』を描いて、『グノーシス』の寓意を込めるほどの、強い正義感をもっていたことには、今更ながら驚かされるのす。」
 
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      若き天才画家ラファエロ

 ラファエロは、三十七歳の誕生日に突然、この世を去りますが、しかし彼は、自信を持って、こう言い残しています。「我らの時代こそ、かつて最も偉大だった古代ギリシャの時代と肩を並べるほど素晴らしい時代なのだ。」と。


 もっと詳しくは『迷宮博物館・モナリザの微笑みの謎』で。


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