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映画「僕の彼女は魔法使い」に出てくる『ヘルメス文書』とは?②

   映画「僕の彼女は魔法使い」の思想的背景には、1世紀頃からエジプトのアレキサンドリアに興った、「ヘルメス思想」と呼ばれる神秘思想があることを見逃すことはできない。DzwhOykVsAIlGAz[1]

この「ヘルメス思想」こそ、「ヘレニズム精神」の中核となるものであり、「グノーシス思想」「新プラトン主義」の源流となった思想である。

 この「ヘルメス思想」の内容を大まかに紹介すると、

・ まず「光であり、生命であり、叡知である『至高神』が存在すること。」

・ 「人間の起源は、その光であり、生命であり、叡知である『至高神』によって創られたもので、ゆえに人間は、神と同じ性質をもつ存在である」とする「神人合一思想」

・ 「太陽中心説」「宇宙観」

・ 「下なるものは、上なるもののごとく、上なるものは、下なるもののごとし」という「天上の世界と地上の世界の相関関係」

・ 「本来は、天上の世界の存在であった人間が、地上の世界に降りて修行して、再び天上の世界へ還っていくということ自体に価値がある」とする「転生輪廻説」

・ また「人間の本質は、『魂』であって、地上の世界の物質的なるものを超えて、もとの天上の世界へと昇るように努力しなければならない」という「魂の修行論」

・ さらには「人間の『魂』を向上させるものは、グノーシス(霊的知識)であり、反対に魂を苦しめ、堕落させる悪とは無知である。人間における最大の悪とは、『神』に対する無知であり、この『神』から切り離された人間は、本質的に無価値な存在である」という「グノーシス思想」

・ その「グノーシス思想」を説くために「天上の世界にある、神的なる者(キリスト)が、地上の世界に降りてきて、人間を教化し、それによって人間は、自ら『魂』を向上させことができ、『神』のレベルまで高められるのである」とする「魂の救済論」

また未来の賢者たちに対しては、これらの「グノーシス思想」に裏付けられた「真なる世界宗教を復活させよう」という呼びかけがなされている予言。

 「ヘルメス思想」の特徴的なことは、「現実世界のことも受け入れて、自己責任を負い、また人間の内部にある霊的なパワーを高めることによって、現実における変革を促していこう」とする考え方がある。

そのためには「自らの知性や心を使って、魂修行に励むこと」が強調されている。

この点「グノーシス思想」が、「現実世界を、ややもすると消極的厭世的にとらえているのに対して、『ヘルメス思想』は、現実世界を積極的肯定的にとらえた思想である」と言えるのである。

 この「ヘルメス思想」の継承者と言われる「グノーシス派」の人々は、「ヘルメス・トリス・メギストス」を、「内なる神ヘルメス」として崇め、また新プラトン主義者たちも、「ヘルメス」を、「ロゴスの神」と呼んでいた。

 さらにヘレニズムの科学者たちは、この「『ヘルメス思想』の中に、世界の秘密が、神の啓示として隠されているので、それを物理学的に証明すべきだ」と考えていた。

 このようなことからアレキサンドリアには、数学や天文学や物理学や医学などの科学が発祥して、また中世には、天体の運行と人間の運命を関連づけた「占星術」や、卑金属から金に変容させようとする化学的「錬金術」が生まれてくるのである。

 この「ヘルメス思想」は、六世紀から十二世紀までのヨーロッパでは消えかかっていたが、じつはイスラム圏に「スーフィズム」(イスラム神秘主義)として受け継がれている。

 そして十字軍の遠征によって十三世紀頃、イスラムからヨーロッパに還流してくる。

 ルネッサンス期には、この「ヘルメス思想」が、コペルニクスの『地動説』の着想となり、近代科学の基礎理論ともなっていく。

 現代の人々は、もう忘れ去って、あまり関心をもってはいないが、『ヘレニズムの時代精神』とは、『秘められたグノーシス(霊的知識)への傾倒』であり、賢人たちからは、『隠された神の知恵』と言われた『ヘルメス思想』にある。

この『ヘルメス思想』が、『ピタゴラスの哲学』や『プラトンの哲学』に受け継がれて、ヨーロッパの哲学の中にも流れている。

 また神秘思想として『グノーシス派』や『新プラトン学派』にも伝わり、これがヨーロッパの思想世界を地下水脈のように流れて、『ルネッサンス時代』に表出しては、思想や科学や芸術に大きなインパクトを与えていくのである。

 このように古代エジプトから継承された「ヘルメス思想」は、『ヘルメス文書』として編纂されて、ローマ帝国や東ローマ帝国にも伝えられ、さらにはイタリアに起こったルネッサンスの「ヒューマニズム精神」「科学思想」にも大きな影響を与えているのである。

 映画「僕の彼女は魔法使い」は、恋愛ファンタジーで、子供から大人まで楽しめるが、このような歴史的背景もあるので、決して浅く観てはならないだろう。完

 

 

 

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