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本庶佑氏のノーベル賞受賞で思い出したタンパク質つながりの田中耕一さん

  人類の内なる敵、ガンの免疫治療薬「オプジーボ」を開発した京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)教授(76)がノーベル医学・生理学賞を受賞した。

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本庶氏は、1992年に免疫力を抑制しているタンパク質(PD―1)を発見し、このタンパク質を除去することで免疫力を強めてガン細胞の増殖を阻止する治療薬を開発した。

「オプジーボ」は、副作用が少なく多くのガン治療に効果があるとして現在、世界60か国で承認されている。

 この本庶氏のノーベル賞受賞を何よりも喜んだ一人が、ノーベル受賞の先輩・田中耕一さんである。

田中さんは、一滴の血液から病気の早期発見ができる技術の実用化に向けて研究中である。現在は血液からアルツハイマー病の原因物質を検出できる段階に達している。これはビッグな医療開発である。C0ϺBB_B1E2BEF7B9AEȭ1_spp0805[1]

1987年頃、「目に見えないものを見る・測る」分析・計測機器を製造する島津製作所に開発研究者として勤務していた。

まだ28歳だった田中耕一さんは、「タンパク質のような高分子に、何か特別な物質を混ぜてイオン化することで、分子の崩れるのを防げないものか?」を研究していた。

ふと「レーザーを吸収しやすい金属微粉末を混ぜれれば、何とかタンパク質の破壊が食い止められるのではないか?」というアイデアを思いついた。

 それを実験し始めた、そんなある日に、実験中に、別の実験で使うつもりであったグリセリンとコバルトの微粉末を混ぜてしまうという失敗を犯してしまった。

 これでは使い物にならなかったので捨てようと思ったが、田中さんは、その時、おばあちゃんがよく言っていた「もったいない」という言葉が浮かんできた。

 捨てないで、そのまま使ってレーザー光を当ててみると、何と溶液中の高分子が壊れないで、そのままイオンの状態になったのである。

 思いもよらなかった「セレンディピティ」の幸運がやってきたのである。

 田中さんのグループは、さらなる研究を重ねて「ソフトレーザー脱離法」というタンパク質をイオン化させる装置を完成させた。

 日本での関心は今ひとつであったが、アメリカの研究者が田中さんの成果を世界に紹介してくれた。しかしその後、動きがなく、田中さんは、いったん、その研究から離れた。

 ところがドイツの研究者らが、田中さんが開発した「ソフトレーザー脱離法」をもとに質量分析機器を改良すると、市場が広がり始めて、世界各国の研究室で使われるようになったという。

 どんなに優れた開発技術でも、それが普及して使われてこそ価値を生むものである。

 これがどんなに凄い開発装置かと言うと、これまで解析できなかった、ごく微量のタンパク質の解析もできるようになり、新薬の開発や病気の診断、また予防にも役立てられることが期待されるからである。

 この「ソフトレーザー脱離イオン化法」で、2002年に、43歳になった田中耕一さんが、ノーベル化学賞を受賞した。これには日本中が一サラリーマンの快挙に湧いた。

 受賞の記者会見で、田中耕一さんは「間違ったことで、世界が驚くような発明をしたことは、本当は話したくないのだが」と照れ笑いしながら前置きして、「失敗は、成功の基と言うが、後から思えばコロンブスの卵のようなもの」と、受賞に至る裏話を明かした。

 田中さんは、人柄がよく、見た目が分かりやすく、親しみやすいサラリーマン・タイプだったので、そちらのキャラクターの方がマスコミに取り上げられてしまった。

 この当時、田中さんは、日本でもっとも有名になった年収800万円のサラリーマンだったが、「ノーベル賞はなかったことにして、今まで通り好きな研究を続けたい」と、島津製作所が提案した重役への道を断り、上級研究員という立場で研究を続けることにした。

 田中さんは「失敗から必ず新たな発見がある。最近は失敗するのが楽しみになってきました。常識の反対は、独創的である」とは、エンジニアとしての名言である。完

(昨年9月から本格的に始めたブログでしたが、読者の皆様のおかげで、アクセス数8000を超えることができました。有難うございました。これからも鋭く突っ込むブログを書いていきますので、よろしく、ご支援お願いいたします)


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